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カラフルな巨大ピラミッド ~里の食を手繰るシリーズ②~

こんにちは!

夏真っ盛りですが、みなさん最後に川遊びをしたのはいつでしょう?
そしてそれはどんな川だったでしょう。

まだ今のような情報化社会になる前の頃、超一級のポテンシャルを持った「地元民しか知らない遊び場」が全国各地に存在していました。

1972年に「足摺宇和海国立公園」に指定された“滑床渓谷”もその一つです。
特に、巨大な一枚岩から成る天然スライダー「雪輪の滝」は、地元の歴代キッズたちの恰好の遊び場として脈々と親しまれてきました。

前世が滑り台だったに違いない完璧な傾斜の滝

地元の子供たちの間では度胸試しの場所でもあった

今ではプロの業者が入り、広く安全に開かれている

そんな手つかずの清流を有する町がいま僕の住む松野町なのですが、この「秘境の川」は少年を肝の据わった漢にする場所でもあり、豊かな食のシンボルでもあるのです。

松野町の美味しさを探るシリーズの第二弾「森と水 前編」始まりです。

カオスな食のテーマパーク

前回の第一弾では農作物(農業)に的を絞る形で、その「美味しさ」にフォーカスしてみましたが、今回は「多様性」という視点から、もっとダイナミックなスケールで松野町の食の豊かさに迫ってみます。

(前回記事はこちら⤵)

記事リンク
訳ありの美味しさ ~里の食を手繰るシリーズ①~

2年前に東京から松野町へ住まいを移してから、日常にいろんな変化がありました。 何が増えたって食べ物を口に入れた時、美味しさにビックリして上を向くことが増えました。 パク…

と言いつつ、話は東京の食事情からになるのですが。

皆さん「東京の食」と聞いてどんなイメージでしょう?
2年前まで東京に住んでいた僕が振り返って抱く印象は、

「東京の食は間違いなく、豊か。」

もちろん多様という意味で。

一歩外へ出ればそこには日本全国津々浦々の郷土料理、世界各地の本場料理、イスラム教徒の為のハラール食に、菜食主義者の為のヴィ―ガン料理、忘れちゃいけない江戸前料理に、ファストフードから高級割烹まで、多種多様なニーズに応えるお店が無数に軒を連ねています。

ほんとに別世界への入口がそこら中にあるような状態です。
唐突にエジプト料理屋を見つけた時なんか「エジプト……、砂?」くらいの縁遠さを感じました。


一体何がこのカオスな食のテーマパークを成り立たせているか。
少し考えてみます。

「都市型」の豊かさを支えるもの

まず最初に「価値観・属性の多様さ」がありそうです。
日本の首都であり国際都市でもある東京には、様々な国籍・出身・文化・宗教・思想・所得を持った人が住んだり、出入りしています。
そのチャンネルの数だけ、それに紐づく食の入り口が存在し得えます。

アジア感極まる上野アメ横

地下街には各地の食文化への入り口が並ぶ

見たこともないスパイス・ハーブ・漢方・各地の調味料。

でも、チャンネルさえあればOKかと言うと、視聴率がゼロ続きだったら存続はできません。
そこで第二の層、「各チャンネルを支える人口の多さ」です。


もし、人口500人くらいの山村でいきなり
「ヨシ!ここで虫の魅力を堪能できる昆虫食レストランをやるぞ!アルコール付きフルコース7,000円で勝負だ!」
と言って始めても、ほぼ間違いなく無理です。一人くらいには刺さるかもですが、基本厳しい視線に晒されること間違いなしです。





だけど、東京だとそれが成立します。

都内で昆虫食をメインに提供するレストラン「ANTCICADA」

目玉メニューは2種の国産コオロギで出汁を取った「コオロギラーメン」

コースでは伝統的なイナゴや蜂の子から、近年養殖が進むコオロギまで。

昆虫の魅力と可能性を存分に引き出すお店は、人気ゆえに予約必須。

仮に500人に1人しか喜ばないチャンネルであっても、人口1,400万人の街では2万8千人の喜ぶ人達がいるわけです。

一つの街の中に、
・多種多様なバックボーン(価値観・属性)が混在している
・そのそれぞれに、支持する人達が沢山いる

「需要」はバッチリです。
となると最後は「供給」の問題。



陸・海・空、全ての物流ネットワークにおいて国内最強立地の東京では、
日本全国・世界各地の「あらゆる食材」が「安く・早く・多く」集まりやすい場所と言えます。



そして、集まった食材を最終的に消費者の元へ送りだす「人材」においても、潤沢な環境です。


他にも様々な要因が複雑に絡んでいるとは思いますが、ひとまずこの三つの層によってカオスな食のテーマパークが成り立っていると見て良さそうです。

眺めてみると確かにこれは唯一無二。まさしく多様。
無数の異なる色の石が膨大な量で組まれている、カラフルで巨大なピラミッドみたいなものです。

地方の町がこのモデルそのまま再現しようとしたって到底無理です。




というより、同じ物差しで測る必要がありません。


なぜならこの食の豊かさはあくまで東京の経済や文化を背景にした「都市型の多様性」でしかなく、
田舎には田舎の「別の型」の多様性があるからです。

「里山型」の食の多様性とは

魅惑のグルメ魔都・東京から松山まで飛行機で約2時間、そこから車でさらに2時間。そこにひっそり広がる小さな里山・松野町に話は移ります。

「都会には、魚は切り身の状態で海を泳いでいると思っている子どもがいる」という、嘘かほんとか分からない話がネット上で一時期盛り上がっていましたが、実際、東京で「食材が“食材になる前”の姿」を感じられる機会は極端に少ないと思います。

逆に言えば、「なにで出来ているのか?どうやって出来ているのか?」を知らなくてもそれを消費できるのが都市型の豊かさとも言えます。

水槽内を優雅に泳ぐシャケの切り身ロボ

一方、松野町では
「食べもの=生きもの=命」のリアリティが東京の比になりません。



そして、そのリアリティの解像度をグイグイと上げていくと見えてくるのが、

「生態系の豊かさ=食の豊かさ」という里山型の多様性モデルです。





生態系が…食の豊かさ??

って感じですが、そこには僕らの想像力の外側で結びつく固い繋がりがありました。


…長くなってきたので、続きは次回!

松野町の美味しさを探るシリーズ第二弾「森と水 後編」はこちら⤵⤵

記事リンク
水面に立つピラミッド ~里の食を手繰るシリーズ③~

僕の同期の協力隊員に「松野の動物博士」こと白井日向くんという、ちょっと変わった隊員がいます。 彼は動物専門学校を卒業後、手つかずの自然が残る松野町へ飛び込み、動植物調査…

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