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スジアオノリの陸上養殖

私たちは、遊子でスジアオノリの種苗~加工までを一貫して行っています。
ここに至るまでには、さまざまな苦悩と挑戦がありました。

2016年にスリーラインズ株式会社を設立した頃、山内家では真鯛養殖を主力としていて、
スジアオノリは複数手掛ける事業の1つという位置づけでした。

魚の餌代の高騰が続く中、相次ぐ気候変動や不安定な水温などの先行き不安も重なり、
2022年、真鯛養殖に区切りをつけることを決断。
県外へ出ていた長男と次男が戻っていたことも背中を押してくれました。


遊子でのスジアオノリ養殖が軌道に乗り始めた今、これまでの歩みを振り返ります。

事業化までの話

きっかけは新しい柱となる事業の模索に、アワビ養殖の視察で八幡浜を訪れたときのこと。
案内された養殖場の隅に、きれいな緑色の物体が浮遊する水槽を見つけました。

「あれは一体なに?」と思い、尋ねてみると「青のりですよ」と。

はじめて見る幻想的な光景に、ものすごーく興味を惹かれて!
幸運にも、スジアオノリ研究をしている大学の先生がその場にいらして、養殖の仕方や諸条件など詳しく教えていただきました。

結局アワビ養殖の視察のつもりが、アワビそっちのけで話に聞き入ってしまって。(笑)

長男の歌吉も「遊子で誰もやっていないスジアオノリ養殖に挑戦したい」とすごく意欲的だったこともあり、
家族みんなで話し合った末に、スジアオノリの陸上養殖へ舵切りを決めました。

それからは水質や立地の調査を開始。

水源確保のため敷地内に井戸を掘り、沸き出る水質を検査してみると、
自然の地層でろ過され、養殖に適していることが判明しました。

井戸海水は地下から水を引いてくるため、「年間を通じて水温が一定」と陸上養殖にうってつけ。
加えて、海中生物(エビ、カニなど)が混入せず、甲殻類アレルギーフリーというメリットも生まれました♬


ここまでは順調に進みましたが、ほかに欠かせない重要なものがあります。
そう、「資金」です。


用地の整備や巨大水槽などの備品購入、施設準備にはまとまったお金が要ります。

さてどうしようかなと考えていたところへ、日本政策投資銀行(DBJ)主催の
「DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」をご紹介いただき、即座にエントリー。

審査には5ヶ月の期間が設けられ、270人もの応募者がいる中、なんと最終選考の10人に選ばれたのです!


これだけでも驚きですが、最終審査までの1ヶ月、伴走してくれたメンターがビジネスプランをまとめてくださり、
見事「女性企業ソーシャルデザイン賞」を受賞。500万円の賞金を手にしました。

賞金と銀行融資、国からの交付金を合わせて、なんとか必要な資金を調達できた私たち。
いよいよ、スジアオノリ養殖の本格始動です。

真鯛養殖からスジアオノリへの転換

スジアオノリ養殖に惹かれた理由の1つに、「給仕が不要であること」があります。

真鯛養殖では1kgの成魚に育つまでに約3kgの餌が必要ですが、こちらは太陽光と海水のみ。
先述の通り、近年はエサ代の高騰が続き、事業の継続が次第に難しくなっていました。

加えて、魚には「浜値」があるため販売価格を自分たちで決められず、価格が乱高下しているときには
売れば売るほど赤字が嵩むといった事態も起こり得ます。


山内家は義父の代から50年にわたって魚の養殖業を営んできましたが、今後の将来性を考えたとき、
真鯛養殖からは一旦手を引いて、スジアオノリ1本で行くことに決めました。


はじめのうちは月間1kgだった製造量も、次第にコツを掴み、今では月40kgまでに規模を拡大。
度重なる試行錯誤を経て、独自の養殖技法を確立しました。

最近では、全国の飲食店様からの引き合いや、他社とのコラボ製品の開発も増えています。

商品ラインアップは、「原藻」「手揉み」「粉末」「微粉末」の4種類。
絹糸のように美しい仕上がりから「きぬ青のり」と名付け、スーパーやデパート、道の駅などでお取り扱いいただいています。

私たちのスジアオノリ事業は、ようやく始まったばかり。
ゆくゆくはこの技術とノウハウを別の地域にも提供して、各地の豊かな暮らしに貢献したいと想いも膨らみます。

そのためにも、まずは私たちがそれを実践できるように、これからも家族一丸となって歩んでいきます(*^-^*)

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