忘れられたモノに、新たな息吹を。まちの記憶で紡ぐ、ものづくり倉庫「Fab Shed」の物語
片付けが終わり、まだがらんとした空間に、ポツン、ポツンと、いくつかのモノたちが置かれています。
それらは、一見するとただの「モノ」かもしれません。
けれど、わたしたちは、その一つひとつが持つ「モノガタリ」に耳を澄ませ、新たな価値を見つけ出すことから、この場所づくりを始めることにしました。
大人のためのものづくり倉庫「Fab Shed」。
ここは、地域の記憶を未来へ繋ぐための、ささやかな実験の場でもあるのです。
この場所の「顔」となる、記憶の扉
この場所の「顔」となる建具たち。それは、ただの出入り口や窓ではありません。かつて、このまちのどこかで、誰かの日常を見つめてきた記憶の入り口です。
今はもうない、あの飲食店の笑い声が聞こえてきそうな「ドア」。少し色褪せた取っ手や無数の傷跡が、過ぎ去った時間の愛おしさを物語ります。そして、大きなガラス窓は、これからここで生まれるであろう、ものづくりに没頭する人々の静かな熱を、やさしく照らし出してくれるはずです。
潮風の香りを、この倉庫へ
海と共に生きてきた、宇和島の営み。その気配を、この場所にも運び込みたい。
そんな想いに応えるように、わたしたちのもとにやってきてくれたモノたちがあります。
地域の歴史と共にあった造船所が、その役目を終えるときに譲り受けた、船の「舵」と「サッシ窓」。
潮風の香りが染み込んだようなこの舵は、Fab Shedの進むべき未来を指し示すシンボルになるのかもしれません。窓の向こうには、どんな新しい世界が見えるでしょうか。
土地の恵みに、人の手をそえて
山に入り、木を伐る。その行為は、森を健やかに保つためであり、この土地の恵みを、わたしたちの手で未来へつなぐための営みでもあります。
仲間たちと手作業で間伐し、製材所で丁寧に挽いてもらった「檜の板」。そして、いつもお世話になっているみかん農家さんが、畑に光を入れるために伐った「みかんの木」。これらは、この空間に温もりと生命力を与えてくれる、かけがえのない素材です。
人々の暮らしの、確かな手触り
まちの賑わい、人々の暮らしの記憶。そうした温かな手触りを、空間の隅々にまで行き渡らせたいと考えています。
居酒屋のカウンターで、たくさんの「おいしい」時間を見守ってきた「一升瓶棚」。店仕舞いをされる老夫婦が、次の世代へ託してくださった商店街の「ガラスショーケース」。そして、平成30年の豪雨災害で被災したお宅の蔵から、解体の際に受け継いだ、およそ100年前の「漆器」。
一つひとつに、人の営みの確かな手触りがあります。
わたしたちは、ここに刻まれた記憶に敬意を払い、大切に受け継いでいきたいと思うのです。
未完成だからこその、可能性
まだ、ここは未完成です。
これから、薪ストーブに火が灯り、工具たちが静かに動き出す日が来るでしょう。レコードプレーヤーから音楽が流れ、仲間たちと語り合う夜が訪れるはずです。
この旅は、始まったばかり。だからこそ、一緒にこの場所を育ててくれる仲間を探しています。
倉庫の片付けやDIYを手伝ってくれる人、面白いアイデアをくれる人、ただ、お茶を飲みながら未来の話をしてくれる人。どんな関わり方でも大歓迎です。
もし、このささやかな実験に少しでも心を動かされたなら、ぜひ気軽に声をかけてください。
Fab Shedの物語は、ここから、あなたと共に始まります。
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