道の駅は好きですか?
僕はショッピングモールより好きです。特に、だいたい端の方にこじんまりと設けられている「クラフトコーナー」が。
生鮮食品や特産品、お土産だったりに比べたら脇役コンテンツとして扱われがちなクラフトコーナーですが、有名な道の駅ならまだしも、小さな道の駅にも必ずと言っていいほど設けられています。
中には二度見してしまうくらい手のかかっている物も珍しくありません。
しかも、明らかに儲ける気のない価格設定だったりします。
そうなってくると湧いてくるのは、
「一体どんな人が、どういうモチベーションでこんな手のかかる物を作ってるのか」
「普段どんな暮らしをしてる人で、どんな顔しながらこれを作ってるんだろう」
という、余計なお世話な興味です。
旅行者では知りえなかったその内側の現場に、移住して暮らすことで初めて触れることが出来ました。
どこにでもいる“隠れクラフトマン”たち
いま自分が借りている家は近隣でレストランを営んでいるオーナーさんのご実家になるのですが、この家の勝手口を開けるとズラリと工具が並んだ工房が現れます。
ここは親父さんの代から受け継いだ工房らしく、レストラン業の傍ら、空いた時間にお店の改造から趣味のナイフ作り、オリジナルのルアー作り、家具制作など、とにかく「欲しいと思ったものをまず自分で作ってみるコーナー」として使っているとのこと。
そんな大家さんが言った一言が、
「シャイだから表に出てきてないだけで、このあたりにはモノづくりをしてる人が大勢いる。道の駅に出て来てる物は、氷山の一角だよ。」
「だけどホントにみんなシャイだし、本業にしてる人はほとんどいないから、知りずらいだろうね。あと大体、くせ者(笑)」
…松野町にはどうやら、普段は別の顔を持ちながら忍者のようにモノづくりにいそしむ“隠れクラフトマン”が大勢いる気配。
作家と呼ばないで
そんな大家さんの情報をもとに、人づてに隠れクラフトマンの情報を集めていくうちに、
「あっこの誰それさんもそうよー」
という話から
「え!あの人もそうなんですか?!」
っていう方まで、
ますます全容が掴めなくなる隠れクラフトマンの里。
その中のある二人が、会ってもいいよ。とのことで喜んでお宅にお邪魔することに。
古民家らしい立派な門を抜けて、丁寧に剪定された小さなお庭の脇を抜けると、風通しの良い縁側にショウガの効いた手作りのあられとお茶が用意されてました。
「…ここが隠れクラフトマンのアジトか、、」
と警戒しながらモグモグと話を聞いていくと、
「あたしら“作家”なんかじゃあないわ。農閑期で暇な時間に手動かしてるだけ。ただの季節労働者よ。」
という意外な言葉が。
農業の繁忙期を過ぎて、土を休ませているその間、冬には餅をついて、春になったらあられを作る。
そんな季節のサイクルの中に自然と溶け込んでいるのが手仕事で、それは刺し子だったり、刺繍だったり、編み篭だったり。そのほとんどが、先代から教わったものだとか。
「夕飯食べて寝るまでの時間ひまな時あるでしょう?そういう時に手仕事すると無心になって時間が過ぎて、気が付いたらもう眠たくなってる。」
「先代が残した刺繍のパターンが残っとるんやけど、とてもまだ及ばないわ」
隠れクラフトマンの正体は、日常と世代を淡々と紡ぐ古き良き里山の生活者でした。
楽しくライトに次の世代へ
じんわりとする手仕事時間に触れられたところで、地域の子たち向けにモノづくり体験会を開きたくなりました。
聞くところによると、今の若い子たちは昔ながらの手仕事には興味が薄く、それに触れる機会も年々減っているとのこと。
ちょうど、三月にひょんなことからモノづくりワークショップを企画したこともあり、その第二弾という事でどうでしょう?とお願いしてみたら、講師役を快く引き受けてくれました。
早速チラシを作り、夏休み前の小中学校に配布。
当日は噂を聞きつけた近所のおばあちゃん達まで混ざってくれて、思いがけず世代間文化交流の現場に。
途中からは集中力の切れた子が遊び出したり、茶と菓子を得たおばあちゃん達がトークで大盛り上がりし出したりと、賑やかに幕を閉じました。
皆さんの地域にもきっと、豊かな時間の中にいる隠れクラフトマンがいるはずです。
そして、もし松野町へ立ち寄る機会があって、観光では味わえない一歩内側の景色を見たいという方がいたら、一報下さい。
自慢の現場に案内します。
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